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『ドラゴン・オブ・ナチス』観た

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日記。

世の中には、つまらない映画のパターンというのが二つあって、例えば『実写版デビルマン』なんかは、圧倒的な物量を持ってして上から潰しにくる映画と、『エイリアンvsアバター』みたいに思いつきの勢いで、低予算で作ったために、圧倒的な質の低さを持ってして、下から突きあげるようなつまらない映画がある。

大抵、前者の映画は不名誉を持ってして、特異な人の記憶に残るわけなんだけども、後者の映画は記憶に残ることはない。そんな映画は沢山あるわけだし、それはただの記憶の空白地帯でしかない。そもそもそんな明らかな地雷を踏みにいく時点で、よっぽどの愚鈍か、酔狂かのどちらかでしかない。

で、Netflixで『ドラゴン・オブ・ナチス』が視聴できるので、コロニーで人々と見ていた。作品の内容はわかりやすく、「ナチスがドラゴンを復活させたので、それを阻止しよう」という映画だ。ドラゴンとナチス、という、完全にニッチな層に向けた映画なわけだから、B級でない筈がないわけである。というより、こんな思いつきをちゃんと形で作品にできることがすごい、という感じである。普通なら途中で飽きるか、脚本の時点で「無理だろ、こんなの」という風になる。そこは褒められるところだ。そして、ここで褒められるところはここで終わる。

さて、突っこみどころについては、各種映画レビューサイトに書いてある。問題はタイトルになっているドラゴン分とナチス分だ。だって、こんなタイトルの映画にまともな部分を期待しても仕方は無く、むしろそこにこめられている熱量が重要なんだ。多分。あと、こんなの見ても仕方ないのでネタバレもする。

まず、ドラゴン分。ファンタジー世界において、絶対的な恐怖の存在であるドラゴンなわけで、やはりそこには畏怖の対象というか、カッコ良さというか、そういう雰囲気が必要だろう。とはいえ、強さといえば戦闘機がちょっと強くなった程度。ドラゴンっつーか、途中からトカゲだな、と思って見ていたフシがある。途中でオスドラゴンが世界を破滅させるみたいなことを言うんだけど、呆気無く死亡するので、その強さが良くわからない。

さらにナチス分。特に無し。ナチス側の兵器といえばドラゴン一種という凄い極振り。ゲームの世界ですら悪手というのがすぐにわかる。現代でドラゴンといえば、まあ敵役といえばナチスということにしとけば、ドッグファイトする理由になるだろう、くらいの想定なんだろう。ドラゴンの翼についているナチスマークはさすがにカッコ悪い。ここでドラゴン好き向けポイントがマイナス一億点。

あとは、兵隊モノだから、隊長と部下との絆であったりとか、あるいはちょっとヒト癖もある男達が命をかけてミッションをクリアするという、いわゆるテンプレートのようなものを書きたかったのだろう。テンプレートみたいなもの、嫌いじゃない。むしろ好きなほう。ただ、本当にそのようなテンプレートだけなぞっているから、生焼けのホットケーキを喰っている感触がする。

まず、それぞれのキャラクターがわからないし、思い入れができるほど掘りさげてもいないから、あっけなく死んでいくんだけど、そのときに感情がわかない。あえて沸くとすると「面白い顔で死ぬなあ」という、非人道的な感想になってしまう。戦闘機は基本ドラゴンの炎に包まれて死ぬんだけど、雑な炎のエフェクトが画面にチョロっと出て爆発するから、なんか滑稽な感じになってしまっている。あと、部隊の会議に遅刻してやってくる兵士がいて、我々は「オッ、ちょっと規律は守れない問題児だけど、腕は確かなパイロットか?」なんて期待するんだけど、本当に遅刻してきただけだった、とか。

ドラゴンといえばファンタジーなのだけれども、ファンタジー要素といえば、ドラゴンを操る魔女の存在。なんだけど、単に絵を映えさせるために、美女を投入したかっただけでは、という気がする。いまいち存在が曖昧すぎて、どうにもならない。あとから動機もようわからんまま裏切ったりするし。オスドラゴンは復活させたらまずいみたいな話なのかな。だったら、もうすこしエクスカリバーで封印みたいな、思い切った話でもいいじゃないか。変なところで理性を使うな。

とはいえ、そうなんだ、B級映画なんだから、こんなのいいじゃないか。脚本に期待することが間違っているんだ。ドラゴンとのドッグファイトが突き抜けていればいいし、トンデモ展開で唖然とさせてくれればいいし、そうすれば、エンターテイメントなんだ……。だって、ラーメン二郎を喰うときに繊細な味付けは望まないだろう……。変なところで力を温存するな。

そうそう、ドラゴンの巣を爆撃に行くさいに、爆撃機の爆弾を拾うドラゴンには「理性があるな!」という感想を抱きました。ここも褒めるところだな、そういえば。

というわけで、近年の本質的なアニメである『異世界はスマートフォンとともに。』を圧倒するコンテンツなので、是非見て、せっかくの週末を無駄にして欲しいなと思います。見るなら友達と一緒に酒を飲みながら。

ちなみに、他に見ていた人は、体調を崩してパブロンを飲んでいた。