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はじめてスレッドを荒らした夜

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今のおっさんネットサーファーは、大抵「ネットウォッチ」という言葉を知っていると思う。要は「インターネット上で面白おかしい人を遠巻きに見て楽しむ」という行為である。だが、たまに勘違いした人間が「この面白おかしい人をいじったら面白くなるんじゃないか」と思うようになる。その確率というのは有名になればなるほど高くなる。これは仕方ないことだが、たまに宝くじが当たる確率で、俺のようなつまらない人間に対して、こういう奴が目の前に現れる。だったら、宝くじが当たって欲しいのだが、そもそも宝くじを買ったことがない。

現5ch、あるいは旧2chにおいて、ネットwatch板の看板には「ウォッチ先 さわらず荒らさず まったりと」と書かれてある。これは色々な解釈があるが、いわゆる不可侵条約みたいなものだと俺は理解している。もちろん、これは一方的な不可侵条約なのであって、相手側がどう出るかはわからない。しかし、触れなければ、ウォッチ側の存在に気が付かれる確率は低下する。また、相手がどう出るかわからない以上、自分たちが安全にウォッチする場所を守るための最低限の自衛である、という風に捉えている。

さて、このブログにおいて、俺がTwitchで匿名的にコメントする際に、俺の名前が使われていることを話した。これは一部界隈の慣習であって、他の界隈の慣習ではない。そして、俺はその一部界隈の慣習に当てはまらない人と付き合っている。そうした場合、こういった慣習を持ってこられるのは邪魔である。もちろん、自分の名前を使いながら、善意のコメントをする人もいるのだが、それは少数であって、大抵は俺を罵倒するか、他人を罵倒するかのどちらかの為だけに使われている。

この歳になって、5chのスレッドを荒らした、と言うのは本当に恥ずかしいのだが、結論としてはそうだから仕方ない。要は、俺のことをいじっているスレッドに本人降臨して、俺が考えうる安全でダメージを与える方法で、投稿をし続けた。

さて、この具体的な内容は別の日に書くとして、俺はこのとき、昔に「いじられ」ていた同級生が、急にドライバーを振り回し周囲の同級生を威嚇し始めたことを、唐突に思い出した。周囲から見れば、あだ名を連呼され、そのあだ名が嫌だったが故の行動だったと思う。俺は異常者でクズだから、当時から、他人に対して最低限の想像力を働かせることが出来なかった。「当人が了解しないいじりは単なるいじめだ」という一般論も十分に理解できる。俺は過去にいけないから、過去の自分に説教はできない。この思い出のポイントは「なぜ人は唐突に刃物を振り回すのか」ということである。そして、俺は、今回俺が5chで荒らすということは、心情的にはこれに近いものだったのだと感じた。

まず、刃物を振り回される側からすると、大抵こういった「いじり」行為というのは、いわゆる当人達にとっては、些細なことであると思う。想像力が大切だというが、本人達の想像力では、「この程度は自分なら気にしないから、当人も敷居を超えないだろう」ということになる。なので、異常者のように見える。だが、このあたりは本当に信用できなくて、借金が一千万円ほどある人間がのほほんと生きていることもあれば、たかだか借金十万円で自殺未遂する人もいる。そういうことを考えると、「この程度なら大丈夫だろう」というのは、あまりアテにならない。そして、問題なのは、大抵は刃物を振り回される側にしかならないのだ。

振り回す側になって、今回如実にあったのは、「何かを奪われてくのを止める」というものだった。これは実際に所有しているということとは関係がないのだと思う。実際に、何も奪われていないし、何も持っていなくとも、奪われているという感覚だけは持つことが出来る。これを広くとらえれば、被害者妄想ということもできる。そして、奪われていたとしても、心の余裕があれば、別にどうってことはない。同じ千円を取られたということでも、給料日後と給料日前だったら、大きく違うということだ。

何を奪われたかのように感じたか。まず自分の好きなゲームを好きな形で楽しむ、ということを奪われ、自分のゲームが上手くなりたいというささやかな望みを奪われ、その中で生まれるであろう繋がりを奪われた、と感じた。彼らからすれば、ささやかなことかもしれない。だって、たかがゲームなんだから。しかし、社会とも孤立し、生活も困窮している現状では、ささやかな楽しみはこれしかなかったのだ。そして、そのような中で、不眠症も再発し、睡眠すら奪われた。

ここまでなら、まだ理解できる範疇だが、自分の感情を点検したところ、もう一つの感情があることに気が付いた。それは、「いざとなったら俺は刺し違うことができるぞ」という謎の自信である。この自信が無ければ、俺はただ死んだと思う。俺はインターネット上で異常者であり、Webサービスの穴をついてはニヤニヤ楽しむ悪趣味な人間であった。相手の拠点がわかれば、そこに乗り込んで暴れることができる、ということを考えていたのだ。

さらに言えば、前々から彼らの動向をウォッチしており、俺の本アカ(配信用アカウントと完全にフォロワーを切り離している)を見つけることが出来ないことにも気が付いた。つまり、俺のクリティカルな情報なんて簡単に検索出来て、それを突きつければ簡単に引っ込めることが出来るということすら出来ない、極端な話、異常者が出てきたときに、その素行を検索して過去に何をしでかしたかを調べることもできない人間の集まりだったということがわかっていたのだ。

恐るに足らず。

俺は、スレッドに書き込むのを続けた。とにかく投稿に全レスを付け始めた。「もうこのスレつまらなくなった、読むのをやめた」「なんでこんなやつと関わったんだ、最初に関わった奴出て来いよ」「本物の異常者じゃん」というレスをニコニコしながら眺めた。

俺に浴びせかける罵倒は、「寒い」「邪魔」「消えろ」「つまらない」という、今まで俺がインターネットで散々言われてきたことであり、今更なものばかりだった。そんな呪詛の百倍近い憎悪を受けてきた人間にとって、言葉が陳腐で弱すぎるのだ。こっちは、インターネットで長年使ってきた名前を使い、相手は匿名の烏合だったのにも関わず、俺をどうしようもできなくなった住民は、内紛をはじめた。スレッドの雰囲気は、まあよくはない。

別に、俺は荒らしたくはなかった。俺はその行為をやめて欲しい、という願いを聞き入れて欲しかっただけだ。綺麗に言えば、それは願いであり、祈りだ。本来はそれほど綺麗なものじゃない。これ以上追い詰めないでくれ。しかし、こういうタイプはそういう顔をすると、ますますつけあがる。だから、その顔だけはしなかった。何度も何度もコミュニケーションを取ろうとしたが、拒絶された。スレッドでも、こちらにはこちらの言い分があって荒らしているという姿勢を崩さなかったが、聞く耳を持たなかった。俺はただ淡々と書き込んだ。

ついにスレッドの勢いは止まった。

そのとき、ふと思ったのは、「こいつらも俺に関わったことによって、自分たちの遊び場が壊されるということは、とても悲しいことなんだろうな」ということだった。俺がゲームの楽しみを奪われたことが辛かったように、スレッドで他人のところで暴れることが楽しみだった人もいただろう、と俺は思った。それが不健全であったとしても、俺が不利益を被らなければ、そこに関わる理由はない。その「他人」がたまたま俺だったのが不幸だな、と思った。

俺はスレッドが完全につぶれる前に、「俺とはもう関わるな、俺は異常者なんだ」と言って場を退散した。この文章を書き終わったあとに、スレッドを確認してみると、ちょっとだけ書き込みがあった。もしかしたら、ここからまた復活するかもしれない。だが、それでいい。完全に潰してしまうと本当に敵対関係になってしまう。最悪、身元まで来て刺されるかもしれない。だから、ただ彼らがもう俺に触れなければ、そのスレで俺の悪口を何言おうが構わない、ということにした。そもそも、書き込まれた悪口は本質的な指摘ではないし。

荒らしたことに弁解はない。もっといい方法があったかもしれないが、これしかなかった。俺は、俺の異常性を武器にして、相手を困らせるしか、方法がなかったのだ。それが、俺を守るための唯一の方法だった。

俺は彼らに目をつけられてからやらなくなったそのゲームを、またはじめた。

最高に、ただ、楽しかった。